Patrick Moraz / The Story Of i (1976)
Virgin Japan VJCP-2544 , total time 46:18

『陽気なサンバ組曲、ただしnon-remaster推奨』

パトリック・モラーツがYES在籍時に発表した1stソロアルバム。 全後半7曲ずつが連続し、前半の最終フレーズが後半の冒頭で使われるなど、アルバム全体で1曲(約46分)という構成だ。 いわゆるシンフォニック・ロックとは趣が異なり、以下のようなエレメントを次々に切り替える、性急な展開になっている。

(1)陽気なプログレッシブ・ラテン(サンバ)・ロック
(2)AORにも通じる歌もの
(3)シンセソロ・バリバリのジャズ・ロック

もちろんキーボード・プレイヤーの作品だけあって、ピアノ・シンセ・サウンドは多彩であり、気品あふれるクラシカルなフレーズが随所に盛り込まれる。 終盤になると、各種主題が次々現れる大詰めパートから、メロトロンによる最終章へとなだれ込む。 本作以降のソロ3作は、通称「ブラジル3部作」と呼ばれているようだ。 サンバを大胆に取り入れたプログレ作品は希少であり、筆者は他に思い浮かびません。

YES在籍時の作品ということで、YESっぽいと言う意見も見かける。 確かに、序盤のハーモニーはそれっぽいし、Intermezzo(前半の英・仏2重の女性ボーカルが聴き所)後半のインストパートが、ちょっとだけ錯乱の扉っぽいけど、 それほど重くはないし、むしろYESという先入観がない方が楽しめると思う。

ちなみに冒頭の効果音は、PrinceのLotusFlow3rに近い。 聴き比べてみるのも面白いが、LotusFlow3rでは何故か巨大なクリックノイズあり(筆者は消したヤツを聴いてるが)。

2006年頃、TimeWave Musicレーベルからボーナストラック付きのリマスター版がリリースされた。 通販サイトへの投稿を見る限りでは「アコースティック・ギターなど、埋もれていた音がはっきり聴こえる」など、音質面でも好評のようである。 確かに「埋もれていた音が聴こえる」のは間違いない。 しかし音質が良いかと問われれば、それは「否」である。 「過ぎたるは及ばざるが如し」といわれるとおり、過剰なエンハンスメントによってキンキン鳴っているだけ。 開始2:40あたりは副作用が顕著で、低音が歪んで(音割れして)いる状態。 一方、従来版の録音はクリアであるものの、やや臨場感に欠ける。 サンバならではのパーカッション群を十分に表現し切れていない印象あり、 Sound Engine Freeを使って自分でリマスターしてみる。

以降、ボーナストラックについて。
Variationsはジャズっぽいドラムンピアノ。これは緊張感が高く、素直に素晴らしい。
Children's Voicesは、レコーディングの様子を収録したものらしく、バックでオケが流されて、子どもたちが歌っている。 OKが出たのか、みんな笑っている、ほのぼのしたトラック。

  1. Impact 3:31
  2. Warmer hands 3:31
  3. The storm 0:52
  4. Cachaça(Baião) 4:03
  5. Intermezzo 2:58
  6. Indoors 3:39
  7. Best years of our lives 4:00
  8. Desent 1:43
  9. Incantation(Profession) 1:52
  10. Dancing now 4:37
  11. Impressions(The dream) 2:50
  12. Like a child in disguise 4:05
  13. Rise and fall 5:35
  14. Symphony in the space 2:59
  15. Bonous Tracks (remaster version only):
    Chachaça Variations 6:14
  16. Chachaça's Children's Voices 4:31


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