Klaus Schulze
[末尾]


"X" (1978 / 2005)

シュルツェの10作目アルバム。アルバムタイトル"X"は、"10"を意味する。 収録曲名は、シュルツェがリスペクトする人物に因むもの。 このCDはRevisited (InsideOutの別レーベル) による2005年再リリースで、 ボーナストラックを追加。本編も従来版CDに比べて、大幅に延長されている。

Revisited SPV089-REV005 - total time : 159.28


Disc1 : 79.45
  1. Friedrich Nietzsche 24.50
  2. Georg Trakl 26.04
  3. Frank Herbert 10.51
  4. Friedemann Bach 18.00
Disc2 : 79.43
  1. Ludwig II. von Bayern 28.39
  2. Heinrich von Kleist 29.32
  3. Object D'Louis 21.32

Performed by: Klaus Schulze, Harald Grosskopf (drumkit),
Wolfgang Tiepold (cello & conductor) & Small string orchestra

従来版CDは、かつてのBrain版Moondawnと同様に、ノイズ削減のためのリミックスが行われ、 演奏時間も短縮されていた。 一方で、このRevisited版はオリジナルマスターから起こしたとされている。 この盤をはじめて聴いたときは、とても衝撃的だった。 当時の印象を、以下に記しておく。

遂に本来の姿を現す名作"X"
従来版CDの"X"は、正直言って期待はずれだった。 シュルツェの曲は、延々と続くシーケンスとリズムをバックに、インプロビゼーションが加わるだけ (あるいは、効果音が続くだけ)という、 悪く言えば「どれも似たようなパターン」である。 ポイントはサウンドにあり、最高のトランス音楽になるか、 単なる退屈な曲になるか、運命の分かれ目といっても過言ではない。 従来版の"X"は、繊細さに欠ける大味なサウンドで、魅力が薄かったのである。 Revisited版はライブを思わせる迫力あるサウンドで、包み込むようなエコーに飲まれてしまうほど。 確かに繊細とは言えないが、説得力のある作品だと思う。

しかし、このCDは低音が異常に出過ぎとの指摘あり、 じっくり聴いてみると歪んでいるようにも思える。 筆者はオリジナルLPを聴いたことがなく、比較確認できないので、 波形を取って調べてみた。

そこで見たものは。。。

ほぼ全編にわたり、最大値(0dB)に張りつく波形!
クリッピングノイズが大量発生してもおかしくない状況だが、 拡大してみると異常はない。 クリッピングは避けられたものの、リミッターが強烈に効いており、 歪みまくりであることが、容易に想像できる。 お決まりのノイズは、#2-1冒頭と、#2-2の4分35秒で確認されている。 #2-1のノイズ消しは波形編集ソフトで容易に可能。

収録内容は以下のとおり。

#1-1は電子ノイズで始まり、ストリングスとメロトロン・コーラスの導入部を経て、 グロスコフのドラムとシュルツェのシンセ・ソロが続く作品。 珍しくシーケンスは入らない。 後半はハードロック的な荒々しさで、まさしく体育会系のノリである。 Timewind, Moondawn, Mirage あたりの冷涼さに比べると、かなり温度が上がっていると感じる。 従来版CDではフェイドアウトされていたエンディングが復刻された。

#1-2は、Revisited版の目玉トラック。 従来版CDでは5分あまりの地味なトラックだったが、その続き21分が公開された。 ゆったりとしたテンポで、 ミニマル・シーケンスが幾重にも重なり、グロスコフのドラムを加えて、 まるで夜景を思わせるようなサウンド絵巻。 珍しくシュルツェのシンセ・ソロは入らない。 23分を過ぎると急加速。 同じリフレインを繰り返しながら、結局フェイドアウトだが、 もしかしたら続きがあるのでは、と感じるのは筆者だけではないはずだ。

#1-3は導入部無しで、いきなりアップテンポなシーケンスが走る作品。 #1-4は導入部の呪術的太鼓(Tangerine Dream / Atem のような)がサイケデリック。 軽いシーケンスとストリングスが、見事に調和している。

#2-1は間違いなく本アルバムのベストトラック。 オーケストラの起用は、従来作品でも行われているが、効果音やドローン的に使われていた。 でも、ここでは極めて音楽的な演奏である。 しかもオーケストラが主役といってもよい。 クラシックの名曲を聴いているような格好良さ。 序盤は主題の展開部、中盤は荘厳な緩衝楽章、終盤はリズム隊を加えて主題のリフレインとなる。 従来版CDでは20秒ほど短縮されていたが、全長版に復刻された。

#2-2もオーケストラ主導の作品。こちらはドローン系で、シンセの効果音が織り交ぜられる。 ラスト数分のみ、グロスコフのリズムが、ゆったりと加わる。

#2-3はボーナストラックで、Ludwig II. von Bayernのライブ録音とクレジットされている。 スタジオ版よりも、更にオーケストラ主体で展開する。 残念ながらヒスノイズが多く、音質もイマイチ。 ボーナストラック目当てで購入するなら、明らかに期待はずれ。 いっそうのこと、このトラックは収録しないで、Georg Traklのフェイドアウトの続きを入れてくれた方が良かったと思うのでした。

Friedrich Nietzsche (1844 - 1900)
哲学者ニーチェ。「神の死」論述で知られる。「ならば神とも戦うまで」違ったか。
Georg Trakl (1887 - 1914)
20世紀初頭に台頭したドイツ表現主義のキーパーソン。ニーチェの流れを汲む、とされる。
Frank Herbert (1920 -1986)
作家。『デューン 砂の惑星』(Dune)の作者。この方のみ米国出身。
Friedemann Bach (1710 - 1784)
有名な作曲家バッハ Johann Sebastian Bach の息子。
Ludwig II. von Bayern (1845 - 1886)
バイエルン王ルートヴィヒ2世
Heinrich von Kleist (1777 - 1811)
ドイツ文学家。『壊れ甕』『ミヒャエル・コールハースの運命』などの作品多数。


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