HELDON (Richard Pinhas)

HELDON(エルドン)はフランスのグループ、と言うよりも、リシャール・ピナスのユニットと解釈しても良いだろう。 サウンドは、ジャーマン・エレクトロニック音楽に通じるシンセサイザ、シーケンサ、リズムマシン中心のアプローチであるが、リバーブの深いコズミック・サウンドを演出するジャーマンプログレとは異なり、レゾナンスをギンギンに効かせた硬質な音作りになっている。 もう一つの要となるのが、ピナス自らが認めるとおりクリムゾン・ロバート・フリップ信奉であり、まさしく「フリップナイズド」されたギタープレイが堪能できる。 また、MAGMA関係者との人的交流が深いことでも知られる。
アルバムは、HELDON名義、Richard Pinhas名義のものがあり、筆者は全体を把握しておりません。 とりあえず聴いたものを紹介します。未聴作品においては、かなりの当たり外れがある模様。

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Heldon (1974)
Heldon

エルドンの1stアルバム。 「エレクトロニック・ゲリラ(Electronique Guerilla)」というタイトルらしいが、手元のCDでは、そのようなクレジットは見当たらない。 1曲目を除いて、エレクトリック・ギターとシンセサイザによるエレクトロニック・アンサンブル。 元MAGMAのパトリック・ゴーシエは、ここで紹介する多くのHeldon作品に参加している。

Spalax 14239 - total time 33:23


冒頭は緩やかなジャズロック。 ひたすらフランス語の演説が続いていくが、これはHeldonプロジェクトのイントロダクションかもしれない。 以降はアンビエントなギターと安っぽいシンセが、うにょうにょ鳴る。 基本的にノンビートで、アンビエント音楽としても楽しめる。 チープな音作りだが、今聴くと逆に新鮮である。 #2と#5はシンセドローンに連続音階的なシーケンス。 そしてフリッパートロニクス(ロバートフリップによるソロギターで、エフェクタを多用した、ミニマル・アンビエント奏法)を思わせるギターとの饗宴だ。
Richard Pinhas (synth,g) Alain Renaud (g) George Grunblatt (synth) Patrick Gauthier (p,synth) Coco Roussel (ds) Pierrot Roussel (g,b) Gilles Deleuze (vo)
  1. Zind 4:25
  2. Back to Heldon 8:32
  3. Northernland Lady 2:21
  4. Ouais Marchais mieux qu'en 68 (Le voyageur) 2:21
  5. Circulus Vitiosus 8:45
  6. Ballade pour Puig Antich (revolutionnaire assassine en Espagne) 6:54


Allez Teia (1975)
Heldon II

エルドンの2ndアルバム。 1曲目のタイトルに、思わず吹き出してしまうが、 全体的にはギターを中心とした静謐なアンビエント作品である。

Spalax 14235 - total time 41:04


1曲目「フリップ王に引き続いて」は、浮遊感たっぷりのエレクトリック・ギター・アルペジオにメロトロンとフリッパートロニクス。叙情的で、きれいな曲である。 2曲目はアコースティック・ギターのみによるアンサンブル。 他の曲も一部例外を除いて、#1〜#2の派生みたいなものである。 #4は短編シーケンサのモチーフのようなもの。 #5はエレクトリック+メロトロン・アンビエント・ドローンだが、終盤には#4のシーケンスが再登場する。
Richard Pinhas (synth,g) George Grunblatt (synth,g) Alain Renaud (g on 2) Alain Bellaiche (b on 3)
  1. In the wake of King Fripp 6:36
  2. Aphanisis 2:22
  3. Omar Diop Blondin 7:26
  4. Moebius 1:52
  5. Fluence: Continuum Mobile Disjonction inclusive 12:14
  6. St Mikael Samstag am abends 6:17
  7. Michel Ettori 4:17


It's Always Rock And Roll (1975)
Heldon III

エルドンの3rdアルバム。 タイトルからバイオレンスなハードロックを連想するが、大半はアヴァンギャルドなエレクトロニカである。 退廃的な雰囲気の曲が多い。 1stアルバムとカップリングした2枚組みCDでもリリースされているが、1st側は曲順が間違っているらしい。

Cuneiform Records Rune 51/52 - total time 83:05


#1はCluster / ZuckerzeitかMusik von Harmoniaあたりに収録されていそうな、チープなリズムマシン・ポップ・ナンバー。 #2や#3は主張の強いエレキ・ギターが、バイオレンスっぽさの片鱗を見せてくれる。 #4や#5はダークなエレクトロニック・ドローンと控えめなシーケンスとの競演。 #6や#7は2ndアルバムに近い曲作り(ただしエレキギターのソロあり)で、#7ではメロトロンも活躍する。 #8はギンギン・エレキギターによるアヴァンギャルド。 ラストはBack to Heldon (1st)の発展系で、連続音階シーケンスがうねり続ける。 終盤はジャズロックなドラムスが暴れまわって終了。 前2作の集大成として聴けるアルバムだが、クールなジャケットに反して、少々マニアックです。
Richard Pinhas (synth,g) George Grunblatt (synth,g) Patrick Gauthier (synth on 9) Gilbert Artman (ds on 3) Jean My Truong (ds on 9) Ariel Kalma (Indian Harmonium on 5)
  1. ICS Machnique 4:13
  2. Cotes de cachalot a la psylocybine 8:36
  3. Mechamment rock 3:39
  4. Cocaine Blues 9:43
  5. Aurore 18:15
  6. Virgin Swedish Blues 7:30
  7. Ocean Boogi 5:55
  8. Zind Destruction 8:25
  9. Doctor Bloodmoney 16:49


Agneta Nilsson (1976)
Heldon IV

エルドンの4thアルバム。 シンセサイザやシーケンサの使い方に進化の見られる、好演アルバムである。

Spalax 14227 - total time 50:24


導入部の#1は退廃的なエレクトロニック・ドローンで、レゾナンスの効いたシンセ群が Cometenmelodie 1 (Kraftwerk / Autobahn 収録) を思わせる。 一転して、#2では煌びやかで美しいシーケンスを聴かせてくれる。 変拍子も交えた、まさにシーケンスだけの曲だ。 #3は、よりハードなシーケンスを導入した勢いのある作品。スリリングなソロギターもあり。終盤は変拍子を交えつつ壊れていく。 #4はエレクトリック・ギター多重録音によるアンビエント。 #5は、このアルバムの集大成。目くるめく展開の大作組曲である。 アンビエント・ギターでスタートし、#2の煌びやかなシーケンスが再登場。 しばらくはリズム隊とともにギターソロがフィーチャーされると、高速シーケンスに置き換わる。 終盤はジャズロックと化して、カットアウト終了。
Richard Pinhas (synth,g) Michel Ettori (g) Alain Bellaiche (bass on 5) Gerard Prevost (bass on 4) Patrick Gauthier (Minimoog on 5) Philibert Rossi (Mellotron on 1) Coco Roussel (ds, perc on 2,5)
  1. Perspective I (ou commence le nihilisme actif) 10:26
  2. Perspective II 3:13
  3. Perspective III (Baader Meinhof Blues) 10:48
  4. Bassong 2:59
  5. Perspective IV: 21:45


Un Reve Sans Consequence Speciale (1976)
Un Reve Sans Consequence Speciale

邦題は「終わりのない夢」。 元MAGMAの名ベーシスト、ヤニック・トップ参加アルバムとして知られる。

King records KICP 2724 - total time : 53.45


いきなり銅鑼が鳴り、工場ノイズのようなギター群とドラム、シーケンス。ヘヴィなトランス体験。 #2はパーカッション乱打戦。ガムランとはちょっと違うか。 15分の#5(レッドライン)は、ヤニック・トップ参加の注目曲。ギター、シーケンサ、シンバル、そして地鳴りベースが自由気ままにぶつかり合う、スピード感あふれるトランス・インプロビゼーション。ジャケットが示すとおり、全曲、インダストリアルなセッション大会である。
Richard Pinhas (synth,g) Francois Auger (ds,synth) Patrick Gauthier (p,synth) Didier Batard (b) Janick Top (b)
  1. Marie Virginie C (11:42)
  2. Elephanta (8:29)
  3. Perspective IV Ter Muco (Live, bonus track on CD) (5:25)
  4. MVC II (6:13)
  5. Toward The Red Line (15:16)
  6. Marie Et Virginie Comp (Live, bonus track on CD) (9:36)


Interface (1978)

ヘルメットの下から覗く「顔」は、ピナス本人ではないかといわれている。 ちまたでは評価の高いアルバムだが、トラック1から7までは、フェイドアウト・フェイドイン・フェイドアウト・フェイドイン・フェイドアウト.....を繰り返す展開で、細切れなサンプラーCDを聴かされているような感じ。 個人的には調子が狂う。 中途にCD化時の追加曲(トラック3, 6, 7)あり、これをスキップすれば良いのかもしれない。

Spalax 14290 - total time : 51.26


クライマックスは、最後の19分に及ぶタイトル曲。 銅鑼が鳴り、鼓動のようなビート。ヘヴィなシンセ・ベースとシーケンスは、完全にワンコード&ワンリフで、フリップナイズド・ギターが、インプロビゼーションを繰り広げる。呪術的な「おどろおどろしさ」が強烈な、トランス音楽の傑作。展開のようなものはなく、一直線に進む曲だが、最後の最後でロックンロール・ギターになる。
Richard Pinhas (synth,g) Francois Auger (ds,synth) Didier Batard (b) Patrick Gauthier (synth)
  1. Les Soucoupes Volantes Vertes 2:26
  2. Jet Girl 9:49
  3. Le Retour Des Soucoupes Volantes 2:21 (additional)
  4. Bal-A-Fou 7:22
  5. Le Fils Des Soucoupes Volantes (Vertes) 1:47
  6. Interface Live Part 1 6:19 (additional)
  7. Interface Live Part 2 2:04 (additional)
  8. Interface 19:02


Stand By (1979)

本作も最高作との呼び声が高い。 元MAGMAの名ボーカリスト、クラウス・ブラスキ参加。2曲目の一部だけながら、あの「お声」が聴ける。 CDでは、オリジナルLPとは曲順が正反対になってしまったが、 もちろん正順に戻して聴いている(トラックリストは正順による)。

Cuneiform Records Rune 53 - total time : 39.53


1曲目のボレロは、21分を超える圧巻のシンセ・テクノ・ロック。とりあえずボレロな導入部から、クラウス・シュルツェにも通じるようなトランシーな高速シーケンスとインプロビゼーション、そしてボコーダによる「Heldon ... synthesizer ...」の連呼。中間部でホワイトノイズにかき消され、後半はミディアムテンポのワンリフ・シーケンスに乗って、ギターソロ大会が繰り広げられる。 2曲目は小曲ながら、不思議な構成(編集)で、軽快でテクニカルな演奏がブラスキの唸り声にかき消されたりする。文句なしにカッコイイ作品で、一級のテクノ・ジャズロック。パトリック・ゴーシエ作(ピナスには作れない曲でしょうね)。 3曲目(タイトル曲)は、ピナスのギターが炸裂する、ヘヴィ・ロック14分。3部構成。第2部はシーケンサと共に加速しテクノ風味もあるが、とにかくギターで終始。エルドン=バイオレンス・メタルのイメージぴったりの作品である。
Richard Pinhas (synth,vocoder,g) Francois Auger (ds) Didier Batard (b) Patrick Gauthier (p,synth) Klaus Blasquiz (vo)
  1. Bolero 21:44
  2. Une Drole De Journee 3:59
  3. Stand By 14:04


Iceland (1979)
Richard Pinhas / Iceland

ピナスのソロ名義による、アンビエント・テクノ作品。機械的なリズムとシーケンス、シンセ・サウンド主体ではあるが、The last kings of thule part2 では、お得意のエレクトリック・ギターが、たっぷり聴ける。リズムパターンか、シーケンスが短時間流れるだけの、サンプル風のトラックもある。ラスト22分のWinter music はノンビートの透明感あふれるアンビエントだ。1970年代に制作されたとは思えないほど、時代を先取りした快作。

Spalax 14236 - total time : 59.34


Richard Pinhas (synth,g) Francois Auger (perc,ds) Jean-Philippe Goude (synth)
  • 9 tracks, トラックリスト掲載省略


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