Philip Glass

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フィリップ・グラスは、スティーブ・ライヒSteve Reichやテリー・ライリーTerry Rileyと同様に「ミニマル音楽」の巨匠として知られる。ミニマル音楽とは、一定フレーズを繰り返す「現代音楽」で、いわゆるプログレッシブ・ロックやポピュラー・ミュージックでも取り上げられることが多い。グラスのミニマルはオルガンを主体とし、時にはホーンセクションやコーラス隊を加えて、長丁場の曲をノンストップで突っ走る。1970年代を中心に作曲されたナンバーは、まさにミニマル・グラスの神髄というべきもので、筆者も完全に虜である。超絶複雑アレンジの殺人的スコアを演奏し続ける、バカテク・アンサンブルに酔うべし。お気に入りは「Music In 12 Parts」「Einstein On The Beach」「Dance Nos. 1-5」の3作で、至福のミニマルを堪能できるのだ。さらに、「Two Pages」「Music With Changing Parts」を押さえておけば十分だろう。一方、比較的新しい作品はミニマル手法を応用したものながら、畳み掛けるような強烈ミニマルを味わうことが出来なくなり、やや興ざめといったところ。
フィリップ・グラスのサントラを含むディスコグラフィーは膨大で、筆者も十分に把握していないので、所有しているアイテムや、聴いたことがある作品をピックアップして紹介いたします。まことに勝手ながら、簡易形式で紹介させていただきます。


North Star (1977)


本作はFrancois de Menil監督によるフィルム「Mark Di Suvero, Sculptor」のサウンドトラックである。制作はParrot Productions Ltd.。タイトルから「彫刻家マーク・ディ・スヴェロのドキュメンタリー」と推測されるが、筆者はその内容を知らない(誰か教えてください)。

タイトル曲の「Etoile Polaire (North Star)」はマイク・オールドフィールドMike Oldfieldのアルバム「Platinum」でカバーされたことで知られる。マイク版は大幅なアレンジが施され、軽快なギターソロやダンサブルなリズムが前面に出るが、オリジナルバージョンは女声コーラスをメインにしたアレンジになっている。終盤に加わるオルガンが何故か不協和音で不気味。個人的な見解だが、この曲はマイクのアルバム「Incantations」収録の「Part1」9:40〜14:00頃に現れるコーラスパートに似ていると思う。

アルバムには全盛期のミニマルが収録され、アイリッシュな雰囲気の女声コーラスもの、陽気なオルガンもの、元気なホーンセクションものなど、色々な演奏形態を楽しめる。ただし、各曲の演奏時間があまりに短かく、特有のカタルシスを味わうことは出来ない。1999年1月ころ、新宿タワーレコードにて約1400円で入手。

(Virgin CDV 2085)[Track List]


Music In 12 Parts (1988)


3枚組の超大作ミニマルで、各ディスクに4パートづつ収録されている。そして各4パートはノンストップで続く。「Part1」は牧歌的で美しいメロディが流れ、ゆったりとした雰囲気だが、「Part2」以降は高速ミニマルで、最後まで突っ走る。まさに「ミニマル・グラスの神髄」と言うべき傑作アルバムだ。作曲は1971〜1974年、「Part6」までが1975年録音、「Part7」以降は1987年録音である。

(Virgin 91311-2)[Track List]


Music In 12 Parts (new recording) (1996)


こちらは再レコーディング・バージョンで、もちろん3枚組。オリジナルに比べると、リズムをやや強調した音創りである。「Part1」は女声コーラスが加わり、イメージが少しばかり変化した。筆者は両方の聴き比べをお薦めする。

(Nonesuch 7559-79324-2)[Track List]


Einstein On The Beach (1979)


「浜辺のアインシュタイン」は、4枚組みの大作オペラ。オペラ作家(?)ロバート・ウィルソンRobert Wilsonとの共同名義になっている。1976年11月21日と28日にMetropollitan Opera House (N.Y.C.) にて上演された。 全般にミニマルであるが、大掛かりな曲構成が特徴である。コーラス隊やMCが随所でフィーチャーされ、野心的で荒々しい演奏もあり、MAGMAに似てなくもない。全体を通して聴いても非常に楽しい作品で、天才科学者アインシュタインの破天荒な生き様を垣間見ることが出来る、ような気がする。

(CBS M4K 38875)[Track List]


Einstein On The Beach (new recording) (1993)


こちらは再レコーディング・バージョンで、3枚組である。ディスク枚数は減ったが、トータル時間はオリジナル版よりも長い。またオリジナル版ではフェイドアウトで終了した曲が、本作ではメドレーで続いていくので、よりコンプリートなアレンジであると言える。音質も非常に聴きやすくなっているので、とりあえずこの再レコーディング版がお薦め。オペラのテキスト掲載ブックレット付き。

(Elektra Nonesuch 7559-79323-2)[Track List]


Dance Nos. 1-5 (1988)


2枚組み、5部構成のバレエ曲である。演奏内容はまさしく「ミニマル・グラスの神髄」で、躍動感、美しさは格別だ。奇数番号がアンサンブルによる演奏、偶数番号がオルガン・ソロである。4曲目はグラス自身によるパイプオルガンだ。録音は1979〜1986年。

(CBS M2K 44765)[Track List]


Two Pages (1973-1975/1994)


初期作品の復刻盤で、4曲収録。全てがオルガン主体の演奏で、「同じリフの繰り返し」が前面に出ている。ラストの「Music In Similar Motion」では、一つのリフが時間の経過と共に少しづつ変化していき、複数のリフと重ね合わせて、ゆらぎ感を出すという手法が取られている。イタリアのゴブリンGoblinが「サスペリア」のサントラで、この曲をカバーしています。

(Elektra Nonesuch 9-79326-2)[Track List]


Music With Changing Parts (1971/1994)


初期作品の復刻盤。タイトル曲のみの収録で、61分間ノンストップである。「変化する部分を持つ音楽」とのタイトル通り、曲想ががらりと変わる部分が1箇所だけ存在する。そのまた昔、坂本龍一氏D.J.によるFM番組で、「曲が変化する部分があまりに気持ち良くて、そこばかり繰り返し聴いていると、レコードの溝がそこだけ擦り切れてしまった」と紹介していました。

リマスタリングでクリアな音質だが、所々に音ブレがあるのが残念。

(Elektra Nonesuch 7559-79325-2)[Track List]


The Photographer (1983)


本作はビデオ上映を伴うオペラである。1982年、Holland Festival, Amsterdamにて上演。収録曲の「Gentleman's Honor」は、妻の浮気相手を射殺し、無罪を勝ち取った実在の男性を歌ったもの。聞いたところによると、日本のフォークソングでこの曲と同じコード進行のものがあるらしい。後半の「Act III」は牧歌的な導入部からテンポ・アップし、畳み掛けるようなクライマックスを迎える佳曲。ただ、音質があまりクリアでなく、リマスター版の登場が待たれるところ。

(CBS MK 37849)[Track List]


Koyaanisqatsi (new recording) (1998)


本作は1982年のドキュメンタリー映画「コヤニスカッティ」のサントラであり、再レコーディング・バージョンである。オリジナル版は1LPに収めるため、曲目削除や演奏時間の短縮が行われたが、本作はフルアレンジ(演奏メンバーもオリジナルと同一)である。「コヤニスカッティ」はホピ族の言葉で「バランスを失った世界」を意味するそうだ。映画は'84年に日本公開(筆者は観ていない)され、ビデオもリリースされたが入手困難。

全盛期の強烈ミニマルに比べると、アルペジオを聴かされているような感じかなぁ。前半4曲はメドレー。お気に入りは5曲目の「Vessels」。7曲目の「The Grid」は「Dance Nos.1-5」に近いがシンプルなアレンジで薄味。ラスト「Prophecies」は低音オルガンとおどろおどろしい合唱隊が印象的。初回盤にはサンプラーCD「Glass Jukebox」が添付されていた。ざっと聴いてみたが、「これといって新たに購入すべきアイテムはないなぁ」というのが率直な感想。

(Elektra Nonesuch 7559-79519-2)
(ワーナーミュージック・ジャパン WPCS-5194)[Track List]


Solo Piano (1989)


タイトル通り、グラス自身の演奏によるピアノソロ作品。「ピアノによる強烈ミニマル」を期待したが、全般に暗く沈んだムードで、個人的にはそれほど好きになれなかった。現在、手元には残っていない。 以下、所有アイテムではない。

(CBS MK 45576)[Track List]


The Thin Blue Line O.S.T.

サスペンス映画か何かのサントラ。短い曲ばかりで、どれもこれもストリングスによる緩慢なリフレイン。そして、映画からのセリフや銃声、クルマの音がオーバーダビングされている。音楽よりもセリフ中心と言ってよい。ワゴンセール400円で買ったが、もう2度と聴かないと思い中古屋へ。200円で売れた。


Hydrogen Jukebox (1993)

Allen Ginsberg とのコラボレート作品。メロディアスな歌ものが多いが、傑作「浜辺のアインシュタイン」の流れに位置する組曲だ。ま、当時のような強烈なミニマルではないが、メカニカルなオルガン・ミニマルが現れると、ついつい嬉しくなる。奇数拍子パーカッションにコーラス隊や、アンビエントなオペラ物もある。クライマックスのようなものは、無いなぁ。
(Nonesuch 7759-79286-2)


Kundun O.S.T.

チベットを題材にした映画のサントラ。チベット寺院のネイティブ・サウンドが全編に渡って展開される。だからミニマル音楽を聴くには、お薦めではない。


Symphony No.2

交響曲シリーズのひとつで、確か5枚くらい発売されている。たまーにミニマルっぽい緩慢なフレーズが入る程度で、何だかよく分からない作品。ガマンして聴いてみたが、楽しめなかった。ジャケットは綺麗だけど。ミニマル期待ならば、このシリーズは避けた方が無難。


Kronos Quartet performs Philip Glass (1995)

ライヒ作品でもおなじみの、クロノス・カルテットによる演奏。選曲は弦楽四重奏曲 String Quartet No.2 - 5(ちなみに第3番はサントラ「三島」から)。時折、目の覚めるようなフレーズが現れるものの、長く続くことはなく、緩衝楽章の方が多いと思われる。
(Nonesuch WPCS-4460)

詳細はサイト、「 The Philip Glass Library 」をご参照ください。

先頭 Review 末尾 [Jacket Sample]

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