Fireballet / Night on Bold Mountain はげ山の一夜 (1975)
Belle Antique BELLE 142266

『継ぎ接ぎだらけだとしても、積み重ねればオリジナル』

ファイヤーバレー(カタカナ語ならバレエ表記か?、実際の発音はバレイに近い)は、アメリカ出身のプログレッシブ・ロック・グループである。 しかし、1975年当時の国内盤LP(日本フォノグラム)のライナーノーツによれば、「メンバーの氏名から推測すると、イタリア系と思われる」とのこと。 音を聴いてみれば判るとおり、アメリカっぽさは皆無であり、ブリティッシュロックあるいはユーロピアンロックの系譜といえる。

同じくライナーノーツによれば、このグループは当初「Fireball Kids」と名乗りライブ活動をしていたが、名前から受ける印象(ハードロック系?)とサウンド(プログレ)とのミスマッチが甚だしく、必ずしも好評ではなかった。この問題はメンバーも認識しており、「Fireballet」への変更も検討されていたが、合意には至らず。アルバムリリース時に、成り行きでファイヤーバレーになってしまったようだ。

タイトル曲はムソルグスキーの「はげ山の一夜」。さらにドビュッシーの「沈める寺」も収録され、いわゆる「クラシックとロックの融合」であるが、それ以外(ロック、ポップス、クラシック問わず)からの引用も目立つ。 八神某・パープルタウン並みに「あからさま」なケースから、それっぽいサウンドを演じてみました的なケースまで、枚挙に暇がない。これらが見事な演奏力・構成力で矢継ぎ早に展開され、いわゆるプログレを聴く楽しさに満たされているのだ。 もちろん元ネタ探しも、楽しいこと間違いなし。

プロデュースはイアン・マクドナルド(クリムゾン・キングの宮殿、マクドナルド&ジャイルズ、フォリナー、21ST CENTURY SCHIZOID BANDなど)。発売時はグループそのものよりも、イアン・マクドナルド・プロデュースの方が話題に上っていたかもしれない。本作でも要所でサックスやフルートをプレイしており、アルバムの聴き所になっている。

ボーカルは、ピーター・ガブリエル(ジェネシス参加時)を硬質にしたようなソロパートと、イエス的ハーモニーの2形態があり、巧みに使い分けている。

Les Cathedrales(大聖堂) 10:20
シンフォニック系プログレの王道を行くような、起伏緩急に富んだ展開を堪能できる。高らかな主題と、アンビエントな導入部に続いて「Theme One」(George Martin)のメロディがそのまま唄われたりする。中間部ではドビュッシー「夢」「亜麻色の髪の少女」などの曲を挟んで、ドラマティックなクライマックスに向かう。ナレーション部分のオルガンが「サパーズ・レディ」っぽいとの意見もあるようだ。

Centurion(百卒長) 4:49
短編ながら密度の高い曲。ゴシックなボーカルパートを挟みながら、変拍子のインストが炸裂。終盤、「アクアタルカス」のようなフレーズに続いて「聖地エルサレム」のエンディングで決める。この曲にはサブタイトルがあり「ファイヤーボール・キッズ物語」。

The Fireballet(火のバレエ) 5:17
こちらはイエス風。序盤、「The fish」のメロディが2コーラス入り。以降も予想外の展開が続く。途中で「古代文明」を思わせるギターも聞けるが、圧巻はエンディングパート。グランドピアノの印象的なフレーズに乗って、壮大なオーケストレイションとなる。この部分もクラシックからの引用らしいが、曲名をご存じの方、ご教示ください。

Atmospheres(雰囲気/空気) 3:41
「サパーズ・レディ」の序盤に近い雰囲気の、叙情的なナンバー。 間奏における、イアン・マクドナルドのフルートがあまりに美しい。

Night On Bald Mountain(はげ山の一夜) 18:46
「はげ山の一夜」は最初と最後に現れ、中間部は「Night Tale(夜話)」というオリジナル曲と、ドビュッシーの「沈める寺」で構成される。元曲に忠実にアレンジされた「はげ山の一夜」で幕を開け、印象的なギターのリフに続いて「夜話」。 「レターズ」のイントロがそのまま使われ、歌い出しは「バトルフィールド」だったりする。更に「7月の朝」っぽいオルガンに「チャイルド・イン・タイム」っぽい演出につなぐ。 イアン・マクドナルド出演(サックス)後の、強烈にうねりまくるシンセ音に圧倒されると思うが、如何でしょう。 暗転し「沈める寺」。キーボード群とパーカッションを総動員した、壮大な演奏だ。そして「夜話」、「はげ山の一夜」の最終部分へと続き、この組曲は厳かに幕を閉じる。

このCDは、マーキー・インコーポレイティド(Belle Antiqueレーベル)から2014年に再発された紙ジャケットSHM-CDだ。 価格は高めながら、マスタリングは現状考えられる最高レベルの仕上がりである。 ダイナミックレンジもオリジナルに忠実で、音を大きくするためにコンプレッサーを使ってしまった様子もなく、買って良かった一枚だ。 以降は、Belle Antique版のボーナストラック紹介。

Robot Salesman 1977 4:40
南国風のバラードで、こんなのも演れるんだ、と感心。サビの変拍子が効いている。

Pictures Of A City (Live 1974) 11:22
キングクリムゾンのカバー(ポセイドンの2曲目)。間奏部分は「21世紀の精神異常者」。音質は、あまり良くない。

Say Anything 7:58
バラード。X Japanのカバー。日本語の歌詞あり。


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