Parallel World 多元宇宙への旅 (1976)

Far East Family Band
Jacket back
( Nippon Columbia COCA-7257 )

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作品紹介

Far East ファミリー Bandの第2作目。 プロデュースはクラウス・シュルツェ Klaus Schulze、 レコーディングは英マナー・スタジオ The Manor Studio。 1970年初頭からジャーマンプログレをリードする電子音楽の巨匠、クラウス・シュルツェとのコラボレーションにより、前作「地球空洞説」よりも格段に増強されたエレクトロニック・サウンドを堪能できる。 グループにとっても出世作的なアルバムで、後の世界の音楽シーンに影響を与える、「事件」と言ってもいい作品だ。 しかしながらアルバム制作完了後、 高橋 正明、 伊藤 明、 高崎 静夫の3名がグループを去り、残念ながら活動は縮小されていく。 なお、マナー・スタジオはMike Oldfield / Tubular Bells録音のためにVirgin Recordsが設立し、 多くの名作がレコーディングされたスタジオとして広く知られている。

オリジナル・ライナーノーツによれば、録音は1975年、11月から12月にかけて3週間に渡って行われ、第1週目は日本であらかじめ用意された楽曲の録音、2週目はメンバーによるフリーなセッションの録音が行われた。録音テープは24chテープ20本に及んだそうである(マスターが保存されているならば、ぜひリリースしてほしいのだが;)。3週目は、シュルツェによるミキシング主体で進行し、多くのセッション・テープからの選択編集、最終的にシュルツェによるVCS3 Synthi追加録音でレコーディングが完了した。ミキシング以外では、シュルツェはほとんど口出ししていない、らしい。実際、サウンド面ではシュルツェっぽい部分があるものの、シュルツェを連想させるメロディ、コード進行、フレーズは皆無である。発売は、1976年3月。シュルツェ・プロデュース実現までの経緯について、筆者は全く知らないので、情報をいただければ幸いと思う。

サウンドの特徴は、ツインキーボードが織り成す美しいシンセサイザ群であり、ギター、ベース、ドラムスはジャム・セッション的なリズム隊に徹している。タンジェリン・ドリームやクラフトワークのような、シーケンサやリズムマシンを用いた反復フレーズは全くと言っていいほど出てこない。
ドラム系のサウンドはイコライジング処理されて、ハイハットなど大幅に高域シフトしている。また、シーケンサを使ったと思われる「きらめき」を表現したエフェクトが見事だ。シュルツェは翌76年初頭に次回作「
Moondawn (the original master)」を録音しているが、サウンドの質感が非常によく似ているので、この作品もお薦めだ。

宮下 文夫 : Vo,G
深草 彰 : B
高崎 静夫 : Dr
伊藤 明 : Key
高橋 正明 : Key
福島 博人 : G
Produced by Klaus Schulze
Recorded and Computer Remixed by Klaus Schulze
Recording Assistant : Gunter Schickert
Music Producer : Fumio Miyashita
Words by Fumio and Linda Miyashita
Recorded Nov 15th to Dec 5th at The Manor Studio U.K.

レコーディングにあたってシュルツェは、キーボードの高橋正明にソロ活動を奨めたそうである。後年、高橋正明は喜多郎名義でアルバム「天界 Astral Trip」をリリースし、ニューエイジ/ヒーリング・ミュージック・ブームの火付け役として、世界的にブレイクするのである。後年、喜多郎はグラミー賞を獲得するほどのトップ・アーティストとして定着している。

このCDは、1991年3月にリイシューされた「JAPAN ROCK名盤復刻シリーズ」である。あるオーディオ雑誌の立ち読みで偶然、本作のCD化を知り、即座に取り寄せを依頼した。しかし待てど暮らせど入荷の連絡はなく、「もう製造中止になってますから。。」冗談でしょう、と言っても後の祭り、オーダーは取り消さずに放っておいたら数ヶ月後、幸運にも入荷したのである。既に再発から2年以上経過しており、廃盤の一歩手前だったようだ。「今有るものを入手しなければ一生後悔する」の法則を肌で感じた次第である。

以上のようにFar East ファミリー Bandは、我が国において、世界の音楽シーンを動かす歴史的名盤を発表しているにもかかわらず、「地球空洞説」や「天空人」を含む全てのアルバムが入手困難になっている。

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収録曲目

Track Time 邦題 Title
1 4:51 再生 Metempsychosis
2 15:54 生の拡張
時空間の洪水
Entering
Times
3 9:11 Kokoro
4 30:14 多元宇宙への旅
1) アマネスカンの夜明け
2) 甦る起始点
3) 禅
4) 夢想の真理
5) 起光線
6) 西暦2000年
Parallel World
1) Amanezcan
2) Origin
3) Zen
4) Reality
5) New Lights
6) In the year 2000
Total 60:10

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曲目紹介

Metempsychosis(再生)
前作「地球空洞説」の最終トラックは「蘇生」と題されていたが、おそらくこれに関連付けたタイトルだろう。ほとんどがドラム・ソロで、原始的な曲である。風の音のような効果音やシンセが、バックで鳴っている程度だ。
Entering(加入)
遠くで雷鳴が響き、ダイナミックレンジを最大限に使った、かろうじて聞こえるシンセサイザに引き継がれる。そして煌くような効果音と美しすぎるメロトロンが加わる。まさに、固唾を飲む美しさだ。そして、文夫の雄叫びで、後半へ突入する。実は、この曲には歌詞があるのだが、収録されていない。歌は次回作「天空人」で聴ける。この曲は、本作で最もシュルツェ色が出ているように思える。
Times(時間)
歯切れよく打ち鳴らされるリズムとギター、キーボード、エフェクトの掛け合いが見事である。終盤で加速し、「Metempsychosis」のリプライスのようなドラムから、一気にクライマックスへ。ラストはノイズが1分少々続いて終わります。
Kokoro(心)
夕暮れ時の静寂を表現した、哀愁感あふれる歌もの。起伏のある展開で、後半のクライマックスとラストのトリッキーなシンセサイザ・エフェクトが圧巻。
Parallel World(並列世界)
アナログ・レコードの収録時間を目いっぱい使った大作組曲。ジャム・セッションの前半、徹底したアンビエントの後半という、大胆な構成だ。アルバム前半のメドレー「Entering/Times」を逆にしたような展開で、このトラックと類似したフレーズも聴ける。 パラレル・ワールドとは、SF小説でいうところの、反物質の世界を指す。
Amanezcan(アマネスカン)
アマネスカンとは、太陽系の架空の惑星を指すらしい。リズミカルなシンセサイザ・エフェクトによる導入部。
Origin(起源)
演奏時間の半分近くを占める、ロック・ジャム演奏。バンドはシンプルなリフに徹し、カラフルなシンセサイザが音空間を飛びまわっている。ビートが次第に加速する一方で、少しづつ弱まっていき、続くパートに流れていく。歌詞カードには何も記されていないが、部分的に歌があり、思い切り深いエコーがかけられている。
Zen(禅)
ここからが、アンビエント・トラック。声明のようなヴォイスと、「禅、天、地、花、心...」という歌詞?がある。シンセサイザ・エフェクトが、とにかく美しい。
Reality(事実)
メロトロンによる美しいメロディは、Originの一節で使われたシンセ・ソロと同じもの。
New Lights(新しい光)
ストリングス・シンセサイザ群に引き継がれ、後半のクライマックスを形成する。
In The Year 2000(西暦2000年)
エレクトリック・ギターの最高音域を使ったシンプルなリフに、シンセサイザ・エフェクトが加わっていく。リバーブ音にかき消され、消え入るように終了する。

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音質評価

非常に美しい音であるが、エフェクタが過剰なので、たまに音ブレを感じることがある。

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ジャケットについて

このCDのジャケットは、オリジナルをほぼ忠実に縮小したものと思われる。画像ではわかりにくいが、おおよそプログレとは程遠い、前時代的な風貌が微笑ましい。

Illustrator : Taiji Koyama
Photo : Masakazu Sakomitsu
Cover Design : PINK and AO

当時のコピーを。ロックが我が世代の生きざまそのものなら、「パラレルワールド」はその最もラディカルな存在として、明日を撃ち続けるだろう。

Original poster 発売当時のアナログには、大型ポスター兼ライナーノーツが添付され、ポスターはジャケットの別バージョン、ライナーにはマナースタジオでの録音風景などが掲載されていた(左図、クリックするとポスターが見れますが、画質は悪いです)。CDでは、これらは全く掲載されていない。

ジャケットを変更したアナログが再発売されたこともある(下図)。 こちらの方がプログレらしいデザインだったかもしれない。付け加えて、再発コピーを。世界を制覇した暑い嵐が今、日本に再上陸!!...って、暑いのかい??

Analog reissued version

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Parallel World
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